11回にわたってお届けした台湾旅行記もこれで完結です。
最終日の3日目は、台湾で最も有名なレトロ建築物である総督府を見学します。
総督府は台湾の元首が執務をとる官邸。赤と白の建物は日本統治時代に築かれ、現在は一部が一般公開されています。
月に一回だけ特別公開日があってその日は公開エリアが増えるのですが、残念ながら日程がうまく合いませんでした。それでもやっぱり見に行きたい!
その前にまずは朝食。鹹豆漿(シェンドウジャン)を食べに行きます!
1.朝食は秦小姐豆漿で鹹豆漿を食べに行く
秦小姐豆漿は食べログ台湾版にも載っている人気店。朝早くからやっていて、朝食を食べにくる地元の客で賑わっています。
鹹豆漿が名物で、日本でいう「おぼろ豆腐」のような料理です。
この店ではそれだけでない人気メニューがあるのですがそれが「パン」。豆漿餅という豆乳パンなのですが、オレンジピールが入っているらしい。一緒に行った友人は「最終日だから帰ってすぐ、冷凍する!」と大量にお買い上げ。お店で食べているお客さんもいましたね。パンは早々に売り切れるらしいです。
たぶん、台北小巨蛋駅(台北アリーナ駅)から歩いたんだと思いますが(よく覚えてない)、まぁ遠い。けっこう歩きます。最寄りの駅はたぶん台北小巨蛋駅だと思いますが、歩くことは覚悟した方が良い。お店は人で賑わっているので近くまで来たらすぐわかります。
日本人だとわかると、店員さんが指差しで座る座席を案内してくれて、注文用にメモ用紙と日本語のメニューをくれました。ありがたい!片言なら日本語がわかる店員さんもいましたが、事前に調べて書いたメモを見せるのが早いです。
鹹豆漿とハムダンピンを頼んで待つ。
鹹豆漿(シェンドウジャン) 30元(約105円)
鹹豆漿は、温めた豆乳と酢を合わせると酢の凝固作用により豆乳が固まってふわっふわになったところを食べるもの。日本の「おぼろ豆腐」と称されることもありますが、それよりもっとふわっふわで「おぼろ豆腐」よりも「おぼろ」っぽい。豆腐をたべるというよりスープ料理って感じかな。
日本語メニューには「塩豆乳」と書いてありましたが、名前の通り、甘い豆乳ではありません。
もともと豆乳はあまり日本でも飲まず、台湾の投入となると甘いものが多くてさらに苦手なのですが、こちらの鹹豆漿は「だし」が効いていて、おかずとしておいしい。それでもやっぱり酸の味は気になりまして、「おいしい♡」と食べる台湾マニアの友人の隣で見学者状態。
この前日の長白小館の酢菜白肉もそうだったんだけど、酢が苦手な人間には台湾料理はキツイよ。
(いや、本当はおいしくて人気店なのは納得なのです。私が酢と豆乳がそもそも苦手なもので。)
で、見学者状態だったところにお待ちかねの卵料理がやってきた。
火腿蛋餅(ハムダンピン) 35元(約123円)
「ダンピン」と呼ばれる卵料理で、外側はカリカリ、内側はもちもちとした皮の中に卵が入っています。
私たちが選んだのはスタンダードなダンピンではなく、ハム入りです。
見た目よりボリュームもあって、朝食はこれで十分だな。
これがまたおいしかった!
卵料理は裏切らない!!
台湾ありがとう!!!
いやー。松満棲の卵料理といい、卵料理は裏切らないねぇ~。今回の台湾旅行で食べたものの中で3本の指の内に入るよ。
付け合わせのソースと一緒に食べてもおいしいけど、このままでもじゅうぶんおいしい。チーズ好きならチーズのダンピンもおいしそう。
これはね、この旅の初日だったらおかわりするレベルでしたよ。(食べ過ぎて早くもおなかいっぱい。)
このダンピンが無ければ「台湾のローカル料理、おいしいものもあったけど全体的に味が私には合わなかったな」という感想をもちながら帰国したことでしょう。
秦小姐豆漿のハムダンピンありがとう。やっぱり台湾はおいしかった!
秦小姐豆漿
住所:台湾台北市延吉街7號之6
Tel:(02)2570 5589
営業時間:月~金:5:30~20:00 土・日:5:30~14:00 年中無休
アクセス:台北小巨蛋駅 3番出口を出てからは不安になるほど歩く
日本語メニューあり
ハムダンピンでおなかを満たして最後の赤レンガレトロ建物探訪、台湾総督府を目指します。
2.旧帝国生命保険 台北支店
台湾総督府の前に、こちらの建物も日本統治下時代に建てられていたのでご紹介。
終戦までは旧帝国生命保険の台北支店だった建物で、台湾総督府の見学入口(総督府の裏側)の交差点を挟んだ斜向かいに建っています。
派手なデザインではないものの風格のあるたたずまい。素敵な建物だなと思って撮影し、日本に変わって調べたら、
残念ながら、詳細な記録は残っていないが、この場所に帝国生命が事務所を構えたのは1910(明治43)年のことだったという記録が残ってる。
とのことでした。
この本によると、初代の建物は尖塔がある木造建築だったということなので、現在の建物はその後に建てられたのでしょう。
この建物が目に入ったのは、レンガのようなタイルが貼られていることと、遠目ではトゲトゲに見える王冠のような装飾。この装飾は独特で、まるで豊臣秀吉の兜の後ろを飾る菖蒲の葉が放射状に広がるアレっぽかったり、ところどころ東南アジアの植物みたいな模様だったり。
現在は隣にある台湾銀行が管理する「台湾銀行 文物館」として、文献、紙幣などの資料や日本統治時代の文献・資料を中国語に翻訳して展示しているそうです。
台湾銀行 文物館(旧帝国生命保険 台北支店)
竣工:1930年代(昭和初期)頃?
設計者:不明
住所:台北市中正区博愛路168号
アクセス:西門駅から徒歩10分 台湾総督府の一般入場口を目指せばすぐわかる
3.台湾総督府(現・中華民国総督府)
台湾グルメとレトロな建物散策の旅。最後は台湾総督府です。
MRTの西門駅に戻り、西門紅楼とは逆の出口を出て、二股に分かれた通りの南側の通りを歩きます。
途中にはいかにも官庁街といった古くてがっしりとした歴史の古そうな建物があり、目移りしながらも台湾総督府の裏側に到着。見学が目的なら西門駅側から行った方がよいですね。
台湾総督府は予約なしで見学できますが、月に1度、内部公開日があってその日は予約制。よく写真で見る総統府の正門から中に入れて、普段は来賓しか通れないパーティや演説が行われる部屋を見ることができます。残念ながら日程が合わず、今回は通常見学ルートです。
入館するには身分証明書(観光客ならパスポート)の提示が必須で、手荷物チェック、金属探知機、飲み物を持っているなら一口飲むなどさすがに厳しいチェックを受けます。
見学受付にはすでに多くの人が並んでいて、建物の外の壁沿いに並んで待っていたくらいなので、日本への帰国が迫っている身としては館内ツアーの時間が長かったらどうしよう!とちょっと焦りました。入場までに時間がかかるかと思ったけど、そうでもなかったです。ガイドさんがついて回るため、言語ごとにグループ分けをしていて、台湾人の団体さんがいると一気に人がはけます。
日本人がある程度そろうまでガイドさんと雑談。この年は例年と比べて寒かったようで、「普段はもっと暖かいんだけどねー。残念だったね。」とのこと。いやいや、日本よりじゅぶん暖かかくて快適でしたよ。
ある程度の人数がそろったら館内ツアー開始です。
エントランスから入ってしばらくは防犯上の理由からか撮影禁止。
ここから撮影開始です。
日本統治下時代の官庁の建物では「あるある」で、中庭を2つ抱えた「日」の字のような設計プランです。
熱帯地域特有の疫病がはやることを恐れていた時代に衛生管理の観点から大型建築には必ず採光と風通しを考慮して「中庭」が備えられることになっていました。
台湾の場合は亜熱帯地域だからということもあったけど、明治初期の日本の官庁集中化計画のプランでも中庭は設けられていたし、日本銀行旧館も「円」の字のようになっているので、大型の洋館建築ではお約束ですね。
台湾総督府の館内は、日本統治下時代の資料やその他の企画展示をしていて、この時は宇宙についての展示でした。(正直、建物に興味はあっても企画展示に興味はなかったので、もっと建物内部の詳細を見たくてウズウズしていた。)
ここで台湾総督府の建物についてふれておきましょう。
3.台湾総督府について
1919年に完成した総督府は、当時の台湾では最も高層な建築物で中央の塔は60m。日本統治下時代もその後の台湾統治が始まってからも威厳と権力を表す象徴的な建物です。
2019年に行ったならちょうど100周年だったのね!ワタシが行ったのは2018年12月だったので、1か月遅らせていれば何か特別な催し物などやっていたのかもしれません。
デザインは日本初の懸賞金付きコンペによって決められました。
審査員は辰野金吾、妻木頼黄(つまきよりなか)、伊東忠太、塚本靖、野村一郎という帝大建築学科卒の錚々たるメンバー。
28名の応募者の中から7名が入選したのですが、肝心の甲賞(一等)は該当無し。次点の乙賞の長野宇平治(ながのうへいじ)の案が採用されたけど、これがまた厄介で、長野のデザイン案は中央の塔はあるものの低くて全体的に装飾も少なく、「威厳が感じられない」と批判されてしまいます。辰野金吾の意見を取り入れて中央塔の高さを60メートルにした挙句、森山松之助など総督府営繕課所属の建築家によってさまざまな変更が加えられ、「似て非なる物」となりました・・・。
いや、これね。どこが長野案だ!?と突っ込みたくなるわよ。
でもまぁ、長野宇平治も改変した森山松之助らも辰野金吾の門下生。辰野金吾は確かにすごい建築家ではありますが、おいしい案件には一丁噛みしたがるところがあって(国会議事堂設立の経緯でも、妻木頼黄が準備を進めていたところをコンペを主張し、ちゃぶ台返しした。)そこはいただけないよねー。
- コンペというのに1等は該当無し。
- 長野宇平治が抗議しても聞き入れられず。
- 結局出来上がったのは辰野式。
これ、完全に部下のやる気を無くさせるパターンですわ。
台湾で建築の腕を発揮した森山松之助の監察院や近藤十郎の台北医院、西門紅楼は辰野式を踏襲していて、結果として「赤レンガ+白い花崗岩の辰野式は日本統治下時代の建物」として統一感が出たし、現在も台湾の人に愛される建物となっていますが、辰野金吾じゃなかったら許されないよな・・・。
長野宇平治案はnippon.comにその画像があるので見てみて!
ということで、日本初のコンペといってもグレーな部分が多い設立経緯でしたが、出来上がったものは日本が東アジアを支配することを欧州諸国に知らしめるのに一役買ったデザインとなったのは疑いなき事実です。
4.台湾総督府 内部を見学
流暢に日本語を話すガイドさんと一緒に館内を散策。
正面玄関は赤と白の組み合わせだけど、中庭側は赤レンガは一部なのね。
総督府の中庭は「梅の花」のようにデザインされている。素敵です!
台湾総督府が建てられるまでの設計プランの展示などもあり、
完成当時の写真や
模型が展示してあったり。
長野宇平治のデザイン案と森山松之助が修正した図面案が展示されていたり。
日本と同じく地震が多い台湾。耐震設計についてやドアノブなど細かいパーツのこだわりなど展示があって、パネル展示ではあるものの、建築物好きは萌える。
そして、一般公開コースでは最も写真映えがする部屋。
総督の執務室にあるのと同じテーブル。大きいのだけど細工がとにかく細かい!
制服や日本統治時代の「健康保険」に関する公文書など日本語の文章も。
基本的に解説に日本語は無いので、建築関連などなじみのある内容は繁体字でもなんとかわかりますが、それ以外は英語を読んだ方が早かったりする。
写真にするとちょっと地味なのでここへの掲載は省略したけど、当時としては珍しい「喫煙室」があったり。(中は入れません。)
仕事中にたばこを吸うのを気持ち「仕事中に悪いなぁ」と頭を下げて喫煙室に入るように、ドアノブは他の部屋よりも下に付けられているという、日本人っぽいエピソードがあったりして面白かったです。
「日」の字型の隅は六角形のスペースになっていて、これも面白かったのだけど写真だと伝わらない~!
ツアーの最後はギフトショップでお土産購入です。
台湾の雑貨って、なんてかわいいんでしょう!
台湾総督府がかわいく描かれている絵葉書やペーパークラフト、マグネットがかわいいのです。
西門紅楼でも感じたことだけど、台湾のお土産はセンスがいい!日本人の特に女子が好きそうなデザインです。淡い色使いのものが多く、文房具は普段使いができるものが多いです。特にマスキングテープがかわいくて、マステ好きにはたまらないと思う!
残念ながらここでタイムアップ。
台湾総督府と言えば中央に尖塔があって左右に広がるあの光景ですが、ホテルに戻って荷物をピックアップして空港へ戻るのにギリギリな時間となってしまいました。
帰国してから購入した「台北・歴史建築探訪ー日本が遺した建築遺産を歩く」という本によると、まだまだ訪ねていない建物がいっぱいあるようなので、次回は月1の特別公開に合わせて日本から予約をし、準備万端で行きたいです。
旧台湾総督官邸(現・台北賓館)もまだ見ていないので、特別公開日に合わせてセットで見に行くぞ!
中華民国総督府(旧台湾総督府)
設計:長野宇平治(案)、森山松之助(改定)
竣工:1919年(大正8年)
様式:ルネッサンス様式
住所:台北市重慶南路一段122号
Tel:(02)2312-0760 (参観受付用)
営業時間:平日 9:00~12:00(最終受付は11:30)
※月に1度、特別公開日あり
詳細は公式サイト参照(中国語・英語のみ)
アクセス:
西門駅から徒歩10分で見学用入口側に出ます
正面から見たいなら台大医院駅からどうぞ
もともと東京駅の赤レンガと白い花崗岩の建物に憧れはあったのですが、2018年12月のこの台湾のレトロな建築物探しをきっかけに改めて辰野金吾と赤レンガの建物をめぐろうと、2019年~2020年にかけていろいろ巡りました。特に2019年は辰野金吾の没後100年だったので様々な展示があって面白かった!
辰野金吾の先生であるジョサイア・コンドル、辰野金吾の門下生達、辰野金吾とは別の方向性を見出していった同期の設計家とその弟子たちと、まだまだ彼らが手掛けた見るべき建物はたくさんあるわけで。
建築物めぐり、意外と楽しいですよ。
東京の赤レンガの建築物めぐりはこちらから
台湾グルメとレトロな建物を訪ねる 旅行記
- ①朝食は雲呑撈麺と水餃子
- ②ギリシャ建築のような国立台湾博物館
- ③旧台北州庁舎、濟南教会、台北医院 赤レンガの建物を訪ねて
- ④市長官邸藝文沙龍と阿城でガチョウを食べる
- ⑤当代芸術館と西門紅楼 近藤十郎設計の2つの建物
- ⑥饒河街夜市と寧夏夜市を食べ歩き
- ⑦北門に行くなら必見!台北郵便局、国立台湾博物館鉄道部、三井物産北門倉庫
- ⑧台湾グルメ編 青島飯糰のおにぎりと松満樓の小籠包
- ⑨中華と西洋のフュージョン。洋風建築好きなら迪化街に行くべし!
- ⑩迪化街で日本統治下時代の建物を探す
- ⑪秦小姐豆漿で鹹豆漿の朝食を 最後は台湾総督府へ
初めての台湾旅行で役立ちました!
グルメやマッサージなど普通の台湾旅行なら「るるぶ」や「ことりっぷ」でも十分だけど、建物を巡る旅など自分でテーマを決めて旅するならやっぱり「地球の歩き方」が一番詳しい!今回の旅ではとてもお世話になりました。
今回の「日本統治下の建物」を探す旅は、この本無しでは成り立たなかった!
10年前の本で少し情報は古くなるものの、建物はそこに在り続けるわけで。今回は台北だけだったので、台中、台南でもレトロ建築物探しをしたい!
ぽちっとひと押し。応援お願いします♪